2018年10月17日
健康づくり、確かな学力の向上の先進的な取り組み

視察の目的について

本町では、まちづくりの目標を「ひとづくり・まちづくり・未来づくり」と定め、町民の健やかな心と身体を育むことを第一とし、住んでいることを誇りに思い、将来に夢を持ち、安全で安心して生活できるまちづくりを目指している。

健康づくりは、この目標の根幹であり「大井町健康増進計画・食育推進計画」を制定する等諸施策の展開を図っている。また、将来を担う子どもたちに対しては、健やかな成長を育むための確かな学力の向上や教育環境の整備を図る取り組みが行われている。

人口減少や少子高齢化が急激に進行するなか町民の健康増進や子どもたちの確かな学力の向上や教育環境の充実整備は、より極め細かな対応策が求められている。

以上のことから、本町における「健康づくり」や「確かな学力の向上」等の施策に寄与するため、これらの課題に一定の成果を得ている市町の実態を研修し本町の施策に資することを目的として視察を行った。

視察先について

「健康づくり」では、「健康の駅推進事業について」秋田県横手市、「笑顔をあふれる健康のまち」宣言をした青森県南部町を、「確かな学力の向上」では、全国学力調査で上位である大仙市を視察先として選定した。

(1) 秋田県 大仙市(平成30年7月3日 13:30~15:30視察)

【大仙市の概況】

大仙市は、2005年(平成17年)3月22日に、大曲仙北地域の8市町村が合併し誕生した市である。人口は、減少傾向にあり少子高齢化が進んでいる。

観光分野では、「大曲の花火」を中心とした観光誘客の推進や魅力的なイベントの開催、特産品の開発・PRのほか、魅力ある商業地の形成や経営基盤の強化等に力を入れている。

また、農林業分野では、あきたこまちを中心とした高品質・良食味米の安定生産や 地域に適合した農作物づくり、担い手の育成、生産環境の整備のほか、加工・販売・ 交流型農業の推進、農山村環境の改善・保全等に取り組んでいる。

人口:82,789 人(H30/3末)

面積:866.77㎢

一般会計(予算):447億4120万円

〒014-8601 大仙市大曲花園町1-1

☎ 0187-63-1111(代表)

【視察事項の概要】

小中学校における学力向上についての取り組み

大仙市の学校教育概要では、市立小学校 21校 児童数 3,503人、市立中学校 11校 生徒数 1,823人、法人立幼稚園・認定こども園 10園となっている。

大仙市が目指す将来都市像として「人が活き人が集う夢のある田園交流都市」を掲げている。教育による地域活性化を目指し、中学校区単位に小中連携、幼・小連携、地域連携を軸に「学ぶ力を中心に」特色ある取り組みの一層の推進を図っている。

事業推進のキ-ワ-ドは、「共・創・考・開」とし、「共に支え合う力」の育成、「考え、生かす力」の育成、「創造的に生き抜く力」の育成、「開き、信頼される学校づくり」を具体的事業としている。

「大仙市教育メソッド」では、中学校区ごとに小・中連携の特色ある連携に係る取り組みとして以下を共通目標とし、それぞれの地域性の特性を出していることである。また、ここでは、地域との連携をも同様の位置づけとし、地域を巻き込んでの取り組みとしていた。

1.基礎となる力

2.学ぶ力

3.活かす力

ふるさと教育の推進では、体験的学習の時間支援授業として、小学生が「見どころマップ」を作成し、中学生が「国指定名勝の案内」に取り組んでいる。

一人の子どもを複数の目で育てるでは、学校支援活動、学校生活支援員等の配置等地域を含めてのものとなっている。キャリア教育の推進(大学や企業での研修)、国際理解・国際交流活動の推進(中学生海外派遣)等は、外に視野を向ける有意義なものとなっていた。

学ぶ意欲を高める指導の充実では、考えを伝えあう機会と場の設定、個の考えを広げ、深める学び合いなど児童生徒主体の探求型授業づくりが紹介された。

開かれた学校づくりでは、避難所開設訓練への参加、公民館等と連携した各種講座への参加等地域とともに活動している事例、学習習慣確立では、子どもと親と教師がつながる一人勉強ノ-トを活用した取り組みが行われていた。

【視察事項からの考察】

大仙市は、全国学力・学習状況調査結果でトップを走っている秋田県の中でも上位の自治体である。この結果は、どのような取り組みにより得られたものであるのかとても興味を引くものであった。

視察では、次のことが大きな要因になっていることが確認できた。

(1) 市の目標として、教育による地域活性化を目指していること。

(2) 「大仙市教育メソッド」で示すように大仙市教育大綱を基に中学校区ごとに地域の特性を活かし、地域を巻き込んでの取り組みのとしていること。

(3) 地域内、地域外、国際交流等多方面からの子どもの生きる力を助成する施策が体系的に実施しされていること。

(4) 子どもと親と教師との連携が確立されていること。

(5) 家庭での学習態勢が確立されていること。

(6) ホ-ムぺ-ジで「家庭学習の手引き」をダウンロ-ドできるようにし、目標、内容と方法及び評価方法を明示する等家庭学習の大切さの周知を図り実践していること。

本町においても(3)(5)の施策は、参考とし工夫すべきことと思われる。本視察の目的とはずれるが、「大仙市子ども条例」が制定されている。子ども施策の基本となる条例の制定は大仙市の子どもに対する施策の本気度が伺える。参考にしたい。

秋田県 横手市(平成30年7月4日 9:30~11:30視察)

【横手市の概況】

横手市は、秋田県の内陸南部に位置し、平成17年10月1日に旧横手市、増田町、平鹿町、雄物川町、大森町、十文字町、山内村、大雄村の8市町村が合併し、新たに人口10万人を超える秋田県第2の都市として誕生した。

気候は、長い冬と短い夏が特徴で、夏は比較的高温多湿で冬は低温多雪。特に横手市が位置する横手盆地は全国有数の豪雪地帯である。

雪国秋田を代表する横手の「かまくら」は、400年以上の歴史を持つ詩情豊かな民俗行事で、毎年2月15日、16日の2日間行われている。

肥沃な大地に恵まれ、特有の気候風土は、良質な作物と独自の食文化等人を育んできている。

人口:91,022人(H30/3末)

面積:692.80㎢

一般会計(予算):538億2,000万円

〒013-8601 秋田県横手市中央町8番2号

☎ 0182-35-2111(代表)

【視察事項の概要】

健康の駅推進事業について

横手市の要介護認定者の現状(平成29年度3月末現在)は、高齢者人口32,942人、高齢化率 35.64%、要介護認定者は高齢者人口の約20%、そのうち約6割が認知症を発症しているとのことである。

「健康の駅」は、地域住民の健康増進を目的として、健康のための活動を行う施設で、集まる人たちが自由に交流できる交流拠点(サロン)でもある。

(1) 老若男女を問わず、集まりやすい取り組み

(2) 生活習慣病、介護予防に有効な健康増進プログラムを実施していること。

が「健康推進機構」による認証施設になるとのことである。

市では、平成15年に横手市長が全国有志市町村長の「提言・実践首長会」に参加したことを契機に健康の駅事業がスタ-トした。現在は、大規模健康の駅(トレ-ニングセンタ-)3か所を中心に中規模健康の駅(公民館、学校単位)23か所、小規模健康の駅(町内会単位)66か所となっており、市民の継続的な健康づくりを大・中・小の健康の駅がサポ-トしている。

大規模健康の駅には、保健師、健康運動指導士等が配置されており、中・小規模健康の駅へは運動指導員を派遣するなどし、事業の浸透拡大を図っている。利用者に来てもらう大規模健康の駅では、高校生以上1回2時間200円の利用料を徴収しているとのことであった。

健康の駅事業の利用実績は、60歳~69歳までの年齢層が一番多く利用者の25%を占めている。また、利用者は市民の5%ぐらいの利用であるが10%約10,000人まで引き上げるのが目標とのことである。

健康の駅事業の展開では、プロジェクト事業として、子どもの健康づくり事業、若者支援事業、いきいきサロン巡回事業(65か所)を、単発的支援としては出前講座等講師派遣、特定保健指導を行っているとのことである。

若者支援事業では、「引きこもりの方々が自宅から地域へ一歩出ること」を目標に週1回の「グル-プミ-ティグ」を継続的に行うことで就労や復学へと展開できるようになっているとのことである。

健康の駅事業の成果としては、市民の通いやすい健康の駅、専門職の手厚いサポ-ト、幅広い年齢層に適した体操、健康の駅サポ-タ-の充実を挙げられた。

今後の課題としては、認知症対策として認知度診断及び相談会の実施、中規模・小規模駅の高齢化対策として新規参加者、リーダ-の育成を、費用対効果として医療費への貢献度の検証を挙げておられた。

健康への効果はどうかとの視点では、健康の駅利用者と未利用者では、片足たち等の運動機能結果で確認ができているとのことであった。

【視察事項からの考察】

健康の駅は、市民が集える場所、交流の拠点としての位置づけがされている。市の中に拠点(大規模駅)を配置し、体系的なものとすることにより、市全体として健康寿命を延ばす取り組みとなっている。また、身体と心の健康もしっかりと受け止め展開されていた。メニュ-の中に若者から高齢者まで安全で効果的な「らくらく体操」を取り入れ、運動器具も健康の観点からの利用としている。本町の「お-い元気会」と重なる部分もあるが全市民を対象としている点での違いがある。

横手市「スポ-ツ立市よこて」でまちを元気にする条例が制定されている。健康の駅事業と併せスポ-ツによる健康寿命を延ばす取り組みの一つである。参考にしていきたい。

青森県 南部町(平成30年7月5日 9:30~11:30視察)

【南部町の概況】

南部町は、2006年(平成18年)1月1日名川町、南部町、福地村が合併し誕生した町である。人口は減少傾向にあり、少子高齢化が進んでいる。町の中央を流れる馬淵川に沿って肥沃な平野が広がり水稲や野菜の栽培がおこなわれている。丘陵地帯では果樹栽培が盛んである。

「自然の恵みがまちを育み誇りに満ち夢が広がる暮らしの拠点づくり」をまちの将来像とし、幸せを実感できるまちづくりを目指している。

人口:18,489人(平成30年4月1日)

面積:153.15㎢

一般会計(予算):101億4000万円

〒039-0892 青森県三戸郡南部町大字苫米地字下宿23-1

☎ 0178-84-2111(代表)

【視察事項の概要】

「笑顔あふれる健康のまち 南部町」宣言の取り組みについて

南部町は、高齢化率36.5%(H30.2.1)出生92人(H28)死亡数(322人)と人口減少が大きく、死亡原因は、1位 悪性新生物、2位 心疾患 3位 肺炎、4位 老衰 5位脳血管疾患 である。また、早世者が多いとのことである。

南部町の目指す姿として「健康に暮らせる保険・医療・福祉の充実を挙げ、基本目標を

(1) 保険・医療体制の充実

(2) 地域福祉の充実

(3) 子育て支援の充実

(4) 高齢者福祉の充実

等としている。拠点施設整備では、この目標に沿って総事業費24億4千万円で同一敷地内に医療センタ-(延べ床面積7328.51㎡、一般病床26床、 療養病床40床)、健康センタ-(延べ床面積2147.44㎡)の整備を行ったとのことである。この健康センタ-に

(1) 予防健康づくり(母子保健、成人保健、精神保健、感染症等)

(2) 国保・後期高齢

(3) 福祉(高齢・障がい等)

(4) 介護保険

(5) 居宅介護支援事業所

(6) 地域包括支援センタ-

を集約し、保健・医療・福祉サ-ビス提供の統合を図り拠点としていた。この健康センタ-を所管する健康福祉課では、保健師、栄養士、事務担当を配置し、保健福祉サ-ビスを総合的に調整・提供できる体制となっていた。併せて、各分野の連携により必要なサ-ビスが総合的に提供できるシステムである地域包括ケアシステムの確立に取り組まれていた。

南部町の平均寿命(H27)は、男性78.7歳(県下15位)、女性86.6歳(県下2位)、全国平均男性80.8歳、女性87.0であることからすると男性-2.1歳、女性-0.4歳という状況である。介護保険の現状として平成28年度の新規申請に至る要介護状態の原因としては筋骨格系:推間板ヘルニア他、認知症、脳血管疾患を挙げられていた。

特定検診・がん検診受診率では、

特定検診47.3%(H29実績)    ⇒ 60%(H34)

大腸がん検診17.0%(H29実績)  ⇒ 50%(H34)

前立腺がん検診21.4%(H29実績) ⇒ 75%(H34)

等の目標値を定めていた。

今後の課題では、

(1) 全国と比較し、糖尿病、腎不全、肝疾患、脳血管疾患による死亡

(2) がんによる死亡

(3) 自殺者が多いこと。

を改善するために

(1) 生活習慣病対策

(2) うつ病・心の健康づくり対策

(3) 介護予防を柱とした対策

を進めているとのことである。

南部町「笑顔あふれる健康のまち」宣言は、

一 健康に関心を持ち、自分に合った健康づくりを進めます。

一 おいしく、楽しく、バランスの良い、食生活を送ります。

一 運動に親しみ、楽しみながら健康で丈夫な体を作ります。

一 健診を受け、生活習慣改善や健康管理に努めます。

一 家族や地域の人々との触れ合いを大切にし、心の健康づくりを進めます。

としている。健康宣言を行うことで、

(1) 健康宣言大会

(2) 普及啓発事業

(3) 強化事業

に取り組んでおり、⑶強化事業では、特定検診・がん検診受診率アップ作戦として、未受診者に対する周知の強化や受診しやすい環境・体制の整備として、土曜日検診の実施等を行っている。また、乳幼児の保護者等、各種団体、町内会に対する受診勧奨を積極的に行っているとのことである。

事業の効果は、自殺死亡率の低下、脳血管疾患患者の死亡の減少、生活習慣の 改 善等具体的に表れてきているとのことである。

次の取り組みとして、「第三次すこやか南部21」を定め、今後の町の取り組み(重点事業)は、

(1) 特定検診・がん検診受診率の向上

(2) 糖尿病重症化予防

(3) こころの健康づくり

(4) 歯科口腔保健対策

(5) 介護予防

等である。このことにより、「早世の減少と健康寿命の延伸」を目指したいとのことであった。

【視察事項からの考察】

「笑顔あふれる健康のまち 南部町」宣言の取り組みは、青森県の取り組み、短命県返上の取り組みの一環である。町では、「健康宣言」を行うことにより、町全体の取り組みとして認知を受けることにより町民への積極的な参加を意識づける契機となっている。

拠点施設整備では、医療センタ-(病院)を町で設立していることが健康づくりを主導するうえでの大きな要因になっている。施策を進めるうえでは、計画期間内の目標値を定め、計画、実行、評価のサイクルをしっかりと実践していることである。

また、平成24年9月制定の「南部町笑顔あふれる明るいコミュニケ-ション推条例」(通称:鍋条例)は、子どもの健全育成、仲間意識の醸成、健康と地産地消の促進、町全体の活性化を目指したものとのことであり、本町での子ども の健全育成の視点から一つの示唆である。参考にしていきたい。


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